既に皆さんもよくご存知だと思うのですが、私たちが直面している 環境問題には具体的にどんな問題があるかと言うと、
例えば、地球温暖化を防ぐために、二酸化炭素を出さないようにしようという動きがあります。
火力を原子力に換えるべきだという議論がでてきます。
確かに、原子力は二酸化炭素の排出量は少ないかもしれません。
しかし、原子力には別の環境問題があります。どちらが環境問題として深刻な問題をもたらすのでしょうか。
また、農薬と耕地の関係もあります。農薬は何らかの形にマイナスの生態系の影響を引き起こします。
しかし、農薬の使用を止めたら、焼き畑などのようにもっと土地を開発して農地にしなければ足りません。
私たちは化学繊維の洋服を着ていますが、これを全部羊毛だとか コットンだとか絹に切り替えたら、
どのくらい自然を破壊しなければならないでしょうか。
問題は環境破壊といっても、その中でどのようにバランス、調整を取っていくのかということが非常に重要であると思います。
実際に、長い目で見て、環境破壊になるようなことを、環境保全のためと称してやってしまっていることが凄く多いのではないかと思います。
この点、私たちが環境保全問題に取り組む上で、心すべきことだと考えています。
先程のスローガンの話で、「水と緑に恵まれた快適な環境」という言葉をよく耳にします。
「水と緑と土は同義語である。」という学者がいるくらい、この三者は密接不可分の関係にあります。
なぜなら、水のないところと言えば、砂漠や岩山です。そこには緑も土もありません。
では、緑のないところと言えば、それは砂漠や岩山。そこには水も土もありません。
また、土のないところは砂漠と岩山であり、そこには水も緑もありません。
水と緑と土はそういう関係にあります。
従って、緑を失った文明、水を失った文明、土を失った文明はいずれも滅びます。
まことに「水と緑に恵まれた快適な環境」こそが、豊かな文明と文化を保証するのです。
要するに、森がなくなる・緑がなくなることは、水がなくなり、土がなくなることと同義でありますから、
これらがなくなることは、世界の歴史が証明している通り、私たちの文明が滅び、文化も消滅することを意味します。
私たちは大変な事態に直面しているのです。
私たちは私たちの世代だけでなく、次の世代、その次の世代のためにも、松枯れに代表されるような、
緑の喪失、森の消滅を食い止め、美しい緑と水と土を再生させ、保全させる責任があります。
さて、そこで、私たちは何を成すべきか。
これから皆さんと一緒に考え、いい知恵を出し合い、行動計画を立案していきたいと思うのですが、
その前に、ご参考までに、私のこれまでの経験と知識を話したいと思います。
まず、私の松枯れ問題への取り組み、これは『松イキイキ』誕生物語になるのですが、ソコから話を進めようと思います。
この松枯れ問題は、約40年前から全国的に問題化し、松枯れの原因とその対策が議論されてきました。
そして、松枯れの原因は<マダラカミキリ>であるから、殺虫剤を空中散布すればよい、という説が有力となり、
全国各地で農薬の空中散布が行われるようになりました。
しかし、いくら農薬を空中散布しても松枯れ現象はおさまりません。
おさまらないどころか、ますます松枯れはひどくなり、範囲も拡大していきます。
しかも、散布される農薬が河川や水源地など生活環境を汚染するという事態を引き起こしました。
つまり、松枯れの主犯は<マダラカミキリ>ではなかったのです。
現に、農薬の空中散布を取り止める県や市町村が増加してきております。
さて、ここでもう一度、大気汚染と環境の問題を振り返ってみましょう。
冷蔵庫やクーラーなどに使われてきたフロンガスが地球を覆っている薄い膜のオゾン層を破壊すると、
紫外線がシャワーの如く降り注いで、地球上の生命の生存を危うくさせています。これはフロンガスによるオゾン層の破壊の問題です。
もう一つ、自動車や火力発電所、石油コンビナートやゴミ焼却場の排気ガス等は地球温暖化の原因となる他、酸性雨の元凶となって、
汚染物質と共に、雨が地上に降り注ぐと、土壌を汚染して、土壌の中の虫、その他の生き物を死滅させ、また松など樹木の根を腐らせ、
樹力を低下させて、枯死に至らせます。
その結果、森がなくなり、「水と緑と土」のうち、土が死に、緑が生滅するというわけです。
つまり、<マダラカミキリ>ではなくて、酸性雨による土壌の汚染と松の樹力の低下だということです。
【自動車の排ガスによる、松枯れ被害例(撮影:平成6年10月14日/場所:広島県山陽自動車道(西条トンネル周辺))】
私は、かねてから山野や海辺の松枯れの惨憺たる状況を見て、このまま推移すると、
私たちの先祖が育んできた白砂青松の美しい日本の原風景が失われてしまうと危惧し、
美しい白砂青松を救い取り戻すノウハウはないものかと、苦慮していました。
私の会社(イービーエス産興(株))は、ゴルフ場を含めて山野を保護し、緑化を増進するのが事業目的です。
そういうわけで、私は昭和58年初めごろから松枯れ防止剤の研究と開発に取り組みました。
そして、その間に、広島大学の中根教授と台湾の実業家にして漢方薬の権威である、藍 栄典氏の教えを受けることになり、
ここに共同して研究、開発を進めるようになりました。
その結果、平成4年6月、漢方薬を配合した松枯れ防止剤、『松イキイキ』の効果実験に成功して、その開発の成功を公表しました。
この開発成功のニュースは、国の内外に大きな反響を呼びました。そして、『松イキイキ』を使用した結果、
枯れかかった松が見事に甦ったという成功例が数多く報告され、またそのことがビッグなトピックニュースとしてマスコミに取り上げられました。
例えば、日本三景の一つ、宮城県の松島の松枯れ防止に大きな成果をおさめ、「松島の松の緑が見事に蘇生した」、
「今後の松枯れ対策に光明」(平成8年11月23日付け公明新聞の第一面)などと報道されましたが、
この輝かしい成果の報道は枚挙にいとまがないほどです。
私たちはこれまで、経済的な効率化を重視して自然を破壊し、或いは、森を守るためと言いながら林間道を造成して森を破壊しているように、
自然にやさしく、と言いながら、逆のことを行って自然を破壊してきた、現に破壊しつつあるように思います。
私は、美しく快適な環境、生活環境を保全するためには、まず環境問題に関心を持つ、そして身近なところからの問題解決のために
行動を開始することが大切だと思っています。
そこで、私の提案ですが、まず、今、私たちの地域で、生きてはいるが弱っている樹木を検証して、
その1本1本を助けることから始めては如何でしょうか。
専門技術がなくても、土壌改良剤『松イキイキ』を施すだけで、簡単に木々を助ける方法、手法がある筈ですから、
この手法を使って行動を開始したらどうかと思うのです。
【手掘りでの施工の様子(円立寺)】 |
【手掘りでの施工の様子(吉備津神社)】 |
名木、古木、防風林、松原、松林の樹齢100年~500年というのは、途方もなく無限、無量の年齢と生命であります。
私たちより偉大、巨大と言っても間違いではないでしょう。
五木寛之著「大河の一滴」ではありませんが、自然は大河であり、私たちはその一適と言って過言ではないと思います。
その一適であるわたしたちが経済効率化や合理化を口にして、大河である大自然を破壊し続けてきました。
その結果、自然は汚染され、破壊されて、末期症状に陥り、必然的に私たちの生活環境が危機的な状況に立ち至りました。
この点に思いをいたすとき、私たちは微力な一滴(ひとしずく)であるけれども、
大自然の再生と私たちと私たちの子孫の生活環境を保全することに献身する責務があるのではないでしょうか。